「音が鳴り終わる頃には、ペンが勝手に動いている」状態へ。音大合格を引き寄せるソルフェージュの処方箋

音大受験を控えた受験生のみなさん、そしてそのご家族のみなさん。入試が近づくにつれ、ピアノの実技練習と同じくらい、あるいはそれ以上に不安の種になるのが「ソルフェージュ」ではないでしょうか。

「聴音でどうしても書き漏らしが出てしまう」「新曲視唱でリズムと音程が混ざってパニックになる」――そんな悩みを抱えて、一人で譜面と格闘していませんか?

私はこれまで多くの受験生を指導してきましたが、合格を勝ち取る生徒には共通点があります。それは、自分の「つまづきの正体」を正しく理解し、それを解消するための具体的な訓練を積み重ねていることです。ソルフェージュは、ただ闇雲に問題を解くだけでは伸びません。

今回は、私がレッスンで実践している「最短で合格圏内に到達するための論理的なトレーニング」と、独学では気づけない上達の壁についてお話しします。

聴音の鍵は「書く技術」の独立にあり。バイエルをひたすら書き写す意味

聴音の試験で、音が聴き取れているはずなのに最後まで書ききれない、という経験はありませんか?

「あ、今の音はドミソだな」と頭ではわかっているのに、ペンが追いつかずに次の小節が始まってしまう。その焦りがさらなる混乱を招き、結局最後までガタガタになってしまう。これは、実は「聴力」の問題ではなく、「書くスピード」という物理的な技術が不足していることが原因である場合が非常に多いのです。

私は指導の際、以下のようなステップで「書く技術」を磨いていきます。

  1. まずは「1小節を書き取る」短いスパンから始める
  2. バイエルやコールユーブンゲンなどのシンプルな楽譜をひたすら書き写す(写譜)
  3. 何も考えなくても手が勝手に音符の形を捉えられるまで繰り返す

理想は、音が鳴り終わる頃にはペンが勝手に動いている状態

「聴く」ことと「書く」ことが、ほぼ同時進行で行われる。この境地に達すれば、試験中に余計な焦りを感じることはなくなります。書き写すスピードが上がれば、脳のリソースを「音を分析すること」に100%割けるようになるからです。これが、合格に手が届く瞬間の確かな「手応え」になります。

ピアノの「ラ」だけで霧が晴れる。リズムと音程を分離する魔法のメソッド

次に、新曲視唱やリズム打ちでパニックになってしまう方へ。

多くの受験生が陥るのが、「音程」と「リズム」を同時に完璧にしようとして、どちらも崩れてしまうという罠です。音程が取れないからリズムが分からなくなり、リズムが分からないから音程が迷子になる。この悪循環を断ち切るには、情報を徹底的に削ぎ落とす必要があります。

TIP

リズムに不安があるときは、一度「音程」を完全に捨ててみましょう。ピアノの「ラ」の音ひとつだけで課題のリズムを叩き、歌うことで、複雑に見えていたリズムの骨組みが浮き彫りになります。

「音程がある問題だとリズムに集中できなかったけど、音程を考えなくていいならできそう!」

そう言って、生徒さんの表情がパッと明るくなる瞬間を何度も見てきました。霧が晴れたような顔をして、「これならいける」と確信を持った生徒さんは、そこから劇的に伸びます。一度リズムの骨組みが体に入ってしまえば、そこに音程を乗せるのはさほど難しいことではありません。

できないことを一度にやろうとせず、要素を分解して一つずつクリアしていく。この論理的なアプローチこそが、限られた時間の中で合格レベルに達するための最短ルートなのです。

「何ができないかさえ分からない」不安に寄り添う、プロの眼差し

ソルフェージュの独学には、明確な限界があります。それは「自分では、自分のつまづきの正体に気づけない」という点です。

「なぜかいつもここで間違える」「なぜか聴音が苦手だ」という漠然とした苦手意識の裏には、必ず具体的な原因が隠れています。それは、先ほど挙げた「書くスピード」かもしれませんし、特定の音程感覚の欠如、あるいはリズムの拍感の捉え違いかもしれません。

独学で陥りやすい壁

  • 自分のミスに気づかず、間違った癖がつく
  • 苦手な原因(書く速度、音程、リズム等)を特定できない
  • 今の自分に最適な練習メニューが分からない

生徒さん一人ひとり、つまづいている箇所は全く違います。だからこそ、私はレッスンの際、その場で「この生徒さんには今、何が必要か」を咄嗟に判断し、オーダーメイドの処方箋を出すようにしています。

「何ができないのかが分からない」という状態が、受験生にとって一番の苦しみです。だからこそ、一人で抱え込まずに、プロを頼ってほしい。私はそう願っています。

合格への確信を引き出す「具体的な処方箋」

以前、聴音に対して強い苦手意識を持っていた生徒さんがいました。彼女は、一音でも書き漏らすと、そこからペンが止まってしまうタイプでした。

Before

一音でも書き漏らすと、焦ってそこからペンが止まってしまう。聴音に強い苦手意識がある状態。

After

リズムと輪郭を捉える訓練と写譜を徹底。「これならがんばれそう」と自信を持ち、志望校に合格。

ソルフェージュは、才能の有無で決まるものではありません。正しい訓練を、正しい順番で、正しい量だけこなせば、必ず誰でも合格点に達することができます。

もし今、あなたがソルフェージュの壁にぶつかり、合格への自信を失いかけているのなら、ぜひ一度相談してください。あなたの「つまづきの正体」を見つけ出し、「この練習をすればいい」という具体的な背中を押す準備はできています。

合格への扉は、正しい努力の先に必ず開かれています。一緒に、その一歩を踏み出しましょう。

POINT

ソルフェージュ上達の秘訣は、要素を分解して「書く技術」や「リズム感」を個別に鍛えること。独学の限界を感じたらプロの視点を取り入れ、自分の弱点に合わせた正しい訓練を積み重ねることが合格への最短ルートです。

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ピアノを中畠由美子、中島昌子、北川正、矢野裕子、楊麗貞の各氏に師事し、ソルフェージュを鈴木しのぶ、上田真樹の各氏に師事。
桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業後、子供から大人まで幅広く指導を行うピアニスト

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