コンサート情報!

1月23日に横浜みなとみらいホールでシャルル・リシャール=アムランのピアノ・リサイタルがありました。アムランは、2015年に行われたショパン国際ピアノコンクールで2位とクリスチャン・ツィメルマン賞(ベストソナタ賞)を受賞したピアニストです。
プログラムは前半と後半で分かれていて、前半はドビュッシー、ラヴェル、プーランクとフランスの作曲家の曲でまとめられ、後半はショパンのスケルツォ全4曲でした。
今回は後半のスケルツォを聴いた感想を書きたいと思います。

スケルツォ第1番ロ短調op.20

ウィーン滞在中の1834~1835年に完成されたと言われています。ショパンの母国ポーランドの情勢が悪かったため、大好きなポーランドを離れ、ウィーンに居座り音楽家としての将来を模索していた時期です。1つ目の和音は二度七で非常に不安定の和音で、最初の和音で二度七を使うのは非常に珍しいです。この一つの和音でショパンの心も不安定だということが分かります。その次の和音は属七の和音でよく使われる和音です。アムランは最初の和音を非常にショッキングな感じで弾いていました。この二つの和音の後に始まる曲の大部分を占める部分は、テンポが速く、嵐のような激しさと、爆発的なエネルギーに満ちています。激しい部分とは対照的に、中間部は讃美歌のような曲調になります。この部分のゆったりした温かい響きは、故郷ポーランドへの想いを感じることができます。讃美歌のような中間部は、柔らかい音で弾かないといけません。アムランは身体に無駄な力が入っておらず、とても柔らかい音で奏でられていました。大変美しく、ずっと聴いていたいと思うほどでした。

・スケルツォ第2番変ロ短調op.31

ショパンがパリに住んでいた1837年に完成したと言われています。ショパンのスケルツォの中で最も有名で、演奏される機会も多い作品です。冒頭の「問いかけ」のような和音から始まり、不穏な空気の中、不安と希望が交錯するような激しい主題へと展開していきます。
曲の大部分を占めるこの主題は、非常にドラマチックで、情熱的、時には狂気じみた激しさを見せます。しかし、その激しさの中に、どこか優雅さや華やかさも感じさせるのが特徴です。
対照的な中間部は、イ長調の美しい旋律が歌われます。この部分は「おとぎ話」や「夢」のようだとも評され、穏やかで幻想的な雰囲気を持っています。激しい現実から逃れ、理想の世界を夢見ているような、切ない美しさがあります。
アムランの演奏は、同じフォルテの表記でも、絶妙に違うフォルテで演奏されていました。エネルギッシュなフォルテ、パーーーンとホールいっぱいに響くフォルテ、柔らかい音色のフォルテなど、弾きわけられていて感動しました。

・スケルツォ第3番嬰ハ短調op.39

1839年に完成させたと言われています。特に激しさと叙情性のコントラストが際立つ作品です。この曲の主題部分は、荒々しさとダイナミズムが表現されます。非常に速いテンポで、激しく畳みかけるようなパッセージが続きます。
しかし、その激しい主部と対照的に、中間部では幻想的な世界が広がります。ここではコラール(賛美歌)のような重厚な和音の旋律が現れ、その後に、まるで泉が湧き出すかのような美しいアルペジオが降り注ぎます。このアルペジオは、教会の鐘が響き渡る中、天使が舞い降りてくるようだとも言われています。
アムランは、激しい主部と、幻想的な中間部の対比が素晴らしかったです。激しい部分は鋭い打鍵で、中間部のコラールとアルペジオは、一音一音粒がそろっていて、輝いた音でした。特にアルペジオの音色は、軽やかでありながら豊かで感動しました。

・スケルツォ第4番ホ長調op.54

ショパンのスケルツォの中で最後に書かれた作品で、1842年に完成したと言われています。既にショパンの体調はかなり悪く、恋人のジョルジュ・サンドとの関係も1847年の破局に向けて徐々に悪化していった時期になります。しかし、音楽においては円熟していた時期なので、他の3曲が持つドラマティックな要素とは対照的に、第4番は全体的に明るく、軽やかで、喜びや楽しさに満ちた雰囲気の曲です。
この曲は、ホ長調という開放的で明るい調性で書かれており、まるで太陽の光が降り注ぐような快活な主題で始まります。この主題は、リズミカルで躍動感があり、生き生きとした生命力を感じさせます。
劇的な対比を持つ他のスケルツォと比べると、この曲は比較的穏やかで統一感のある流れを持っていますが、中間部では、より叙情的で優美な旋律が現れます。
アムランは、その明るく軽やかな雰囲気を最大限に引き出していました。テクニック的に難しい所も難しさを感じさせない演奏でした。

スケルツォ全4曲を聴いて、とにかく音が常に綺麗で澄んでいました。なかなかあの音色を出せるピアニストは少ないと思います。
1月29日にブレハッチのリサイタルにも行ってきたので、その感想はまた書きたいと思います。

kitsuji_music_lesson

ピアノを中畠由美子、中島昌子、北川正、矢野裕子、楊麗貞の各氏に師事し、ソルフェージュを鈴木しのぶ、上田真樹の各氏に師事。
桐朋学園大学音楽学部ピアノ専攻卒業後、子供から大人まで幅広く指導を行うピアニスト

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